「あさごはん」と書かれた麻生地は、シンプルで美しい暖簾。全面ガラスの構えから、すっきりとした厨房の全てが見られます。

(写真:日本空港ビルディング株式会社)

釜土のごはん、釜から立ち上がる湯気。朝ご飯からもらう自然の恵みに、日本人で良かったという、安心感に包まれて、ふと母を思い出していました。子供の頃は、薪をくべた釜土のご飯で、夕方遊んで帰る腹ペコの子供たちのおやつは味噌を付けた出来たて熱々のおこげのおにぎり。極上の味でした。

母の後ろ姿は、いつも働いていた。毎日20人分位のご飯を作る。井戸水をポンプで汲み、洗濯板と石鹸で洗濯、掃除は箒で掃き、雑巾がけ…。思い出しただけでめまいがしそうです。

釜の真っ黒なすすを縄で作ったタワシで一生懸命洗う母に「母さん釜洗うの大変だね~」と言うと、「洗って磨いてピカピカになるのが楽しみなんだよ~。むしゃくしゃした時はこれが一番!!」と。何度も目に浮かぶ涙を手の甲で、流れる汗をかっぽう着で拭いてる姿が思い出される。そんな苦労の多かった大正生まれの母の思い出が、朝ごはんを食べている間、浮かんでいたのでした。

早朝6時前の羽田空港JAL出発ターミナルは、朝からざわついています。しかしその店の空間は喧騒とは別の時間が、静かに、手際よく美しく流れていたのでした。Hitoshinayaでの時間、私はきっと忘れない。

午前5時15分、昨夕欠航になった函館便のキャンセル待ちに並び、一番のカードをもらい吉と出るか否か、、、。ジェットコースターのような旅と、仕事は続きます。

 

(Posted by 松本幸子)